網膜光凝固術
網膜のレーザー治療(光凝固)に使われる主なレーザーは、網膜の血管や組織を凝固させるために使用される、532ナノメートル(nm)の波長を持つ固体状のグリーンレーザーが一般的ですが、病気の種類によっては、他の波長のレーザーが使用されることもあります。基本的には直径200マイクロメートル(μm)程度の小さな光を網膜などの眼の組織に当てて熱を発生させ、点状の凝固を作り出します。1発の照射は0.01~0.2秒程度とごく短時間なので、まったく痛みを感じないか、少しピリピリと感じることがある程度です。ただ、汎網膜光凝固術など何百~何千発も照射する場合は、時に鈍痛を感じることがありますので、必要に応じて麻酔を追加します。
通常は検査後にご予約いただき、別日に治療を行いますが、緊急性が高いと判断された場合には初診時に実施することもあります。
網膜光凝固術のご注意
ご来院の際は、公共交通機関をご利用いただくか、ご家族などが運転する車でお越しください。
網膜光凝固術では、事前に散瞳薬を点眼し、瞳孔を広げることでより安全にレーザーを照射します。この散瞳薬の効果は4~5時間続くため、治療後は自動車・バイク・自転車などの運転ができません。そのため、治療当日はご自身でお車を運転してのご来院はご遠慮いただくようお願いしております。
また治療後はレーザー光のまぶしさにより一時的に目がくらみ見づらくなります。
網膜剥離、網膜裂孔の場合
網膜に孔が開き、それを通じて眼内液が網膜の裏側に回ると網膜剥離になります。網膜裂孔の段階か、周囲にわずかに網膜剥離ができたばかりの段階ならば、周囲をレーザー光凝固してあげることで、進行を食い止めることができる場合があります。また、網膜が薄くなって、裂孔が開きそうな部分に予防的に光凝固を行うこともあります。ただし、まれに出血によって一時的に見えづらくなることがあります。
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの場合
網膜の中心にある黄斑部は、文字を読むなど細かい部分を見る際に重要な役割を果たしています。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症では、新生血管が発生してくるのを予防したり、すでに発生している新生血管を退縮させたりする目的でレーザー治療を行います。増殖前糖尿病網膜症や増殖糖尿病網膜症、あるいは黄斑浮腫に対して効果があります。病状が進行している場合や血管新生緑内障が疑われる場合には、汎網膜光凝固術(網膜全領域に対するレーザー治療)を行います。
また網膜血管腫、網膜動脈瘤などの異常血管に対して、直接照射することで、血管自体を凝固する目的で照射する場合もあります。
ただし、これらの治療は失明予防を目的としたものであり、病状によってはさらに視力が低下する場合があります。
治療間隔について
1回のレーザー照射で治療を終えると網膜に負荷がかかることが予測される場合や病状次第で、1~2週間の間隔で繰り返し治療が必要な場合があります。
YAGレーザー後嚢切開術(後発白内障の治療)
白内障手術では、水晶体嚢内にある水晶体を砕いて吸引し、水晶体嚢を支えとして残し、嚢内に人工の眼内レンズを挿入します。後発白内障は、この残した水晶体嚢に濁りが生じることで発症します。
後発白内障に対しては、YAG(ヤグ)レーザーによる後嚢切開術を行います。YAGレーザーは、Yttrium-Aluminum-Garnet(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)の略称から来ています。これは、特定の波長範囲の光を発生する固体レーザー装置です。Nd:YAGレーザーは典型的に1.064マイクロメートル(μm)の波長を持ち、近赤外線領域に位置しています。このレーザーは、高出力を発生し、深部組織に光を届けることができるため、医療や産業のさまざまな用途に使用されています。YAGレーザーは衝撃波で、後発白内障で濁った薄い膜(後嚢)を破り、濁りを飛ばす治療を行います。治療時間は5分程度で、痛みはありませんのでご安心ください。
YAGレーザー後嚢切開術のご注意
ご来院の際は、公共交通機関をご利用いただくか、ご家族などが運転する車でお越しください。
YAGレーザー後嚢切開術では、事前に散瞳薬を点眼し、瞳孔を広げることでより安全にレーザーを照射します。この散瞳薬の効果は4~5時間続くため、治療後は自動車・バイク・自転車などの運転ができません。そのため、治療当日はご自身でお車を運転してのご来院はご遠慮いただくようお願いしております。
レーザー照射自体は数分で終わり、再発や白内障手術のような感染リスクはほとんどありません。ただし、治療後には眼圧の一時的な上昇、網膜剥離、眼内レンズの変位や破損といったリスクが完全には排除できません。そのため、治療後1週間および1ヶ月後に問題がないか確認のための診察が必要です。
再診時も、公共交通機関をご利用いただくか、ご家族などが運転する車でお越しください。